以下からダウンロードしていただけますが、文章も掲載しておきます。
国際連合再生可能エネルギー基金設立に関する提言書.doc
再生可能エネルギーを急速に普及させるための提言
〜人類の危機を乗り越えるため国連に無限の予算を〜
@はじめに
IPCCが報告されているように、地球温暖化は人類にとって深刻な脅威です。一刻も早く化石燃料から再生可能エネルギーへの切り替えを進める必要があります。太陽光、風力、地熱、バイオ燃料など、再生可能エネルギーの資源量は、全世界のエネルギー需要を十分満たす事ができ、現状の技術でも、化石燃料から再生可能エネルギーに全面的に切り替える事は可能です。
問題はコストが莫大にかかる事ですが、人類自身が存続の危機に立たされているのに、人間が作ったお金という制度の為に危機回避が遅れるのは滑稽です。そこで、再生可能エネルギーを普及させる目的に限って、国連が無限の予算を使える仕組みの創設を提言します。
A枠組み
(1)国際連合再生可能エネルギー基金「United Nations Renewable Energy Fund」(UNREF)の設立
太陽光発電設備や、風力発電設備、地熱発電設備、バイオ燃料製造設備、蓄電設備、水素製造設備など、再生可能エネルギーに関する設備の整備に目的を限定して、国連が、無限の予算を使える事を、国連で決議します。そして、その実行のために国際連合再生可能エネルギー基金「United Nations Renewable Energy Fund」(UNREF)を設立します。
(2)UNREFが事業を発注
UNREFは、世界全体や各国、地域のエネルギー事情から判断し、必要な再生可能エネルギー関連設備を、国や地域を通して発注します。設置する場所は国、地域が所有する土地が、手続きが簡単で良いですが、適した場所であれば民間から買い取っても構いませんし、良い場所がなく、海沿いであれば、メガフロート(巨大な浮島)を建設しても構いません。
(3)国際入札で事業者を決定
再生可能エネルギー関連設備の建設は、設置する地域や期間である程度まとめて一つのプロジェクトとして行います。プロジェクトの施工を行う事業者は、基本的には国際入札で決定します。入札に参加できる企業については、生産能力や実績、環境負荷低減への取り組み等で明確な基準を定めます。
(4)バーチャルな通貨を使用
UNREFは、各国、地域にバーチャルな通貨で事業の代金を渡します。バーチャルなので、必ずしも紙幣や貨幣は必要ありません。各国、地域は、事業を行った企業に対して、その国、地域の現実の通貨を発行して支払います。
(5)設備は国、地域が保有
完成した設備は、通貨を発行して支払った国、地域が保有します。設備の管理、運営は、国、地域の直営でも、企業に業務委託しても構いません。電気やバイオ燃料、水素等を販売した利益は、国や地域が得ます。
Bメリット
(1)国や地域が資金を調達する必要がない
国や地域が財政出動する場合と違い、国や地域が資金を調達する必要はありません。つまり、国債を発行したり、予算のやりくりをして費用を捻出しなくて済みます。グリーン ニューディールの場合と違い、将来の世代に多額の債務を残す心配がなく、再生可能エネルギーの普及に使う予算の一部を、社会福祉や社会資本整備、直接的な雇用対策などに回す事ができます。
(2)景気に左右されない
各国、地域の予算、企業の投資資金、投資意欲とは関係なく整備を進められるため、景気に左右されません。
(3)最大限に近い速度で整備できる
国連が主体で、無限の予算があることから、再生可能エネルギー関連企業は、リスクをあまり恐れることなく設備投資できます。その為、人類が可能な最大限に近い速度で、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換ができます。
(4)世界の賛同を得やすい
特定の国や地域主導の制度では、全世界の賛同を得られなかったり、時間がかかる可能性があります。しかし、国連が主体であれば、世界的な賛同を得やすいと思われます。化石燃料の輸出国は、急速に化石燃料の需要が減ることで不利益を被ります。そこで、現在大量にエネルギーを消費して、輸入に頼っている国は、現在の輸入量の半分程度は自前で賄えるものの、残りは引き続き輸入に頼る程度に、再生可能エネルギー関連設備の設置量を抑えます。そして、現在の化石燃料輸出国には、自国の消費量を超え、電気やバイオ燃料、水素等を輸出できるだけの設備を設置します。この措置によって、予想される化石燃料輸出国の不満をある程度解消できると思われます。
(5)経済力の格差を縮められる
現在、経済力が強い国や地域には、国内需要を完全に満たす再生可能エネルギー関連設備の整備は行わず、経済力が劣る国や地域には、電気やバイオ燃料、水素等を輸出できるだけの設備を設置します。この措置により、現在、経済力が劣る国は外貨を獲得して豊かになり、国、地域間の経済格差が縮まります。これは、一見、経済力が強い国や地域に不利なように思えるかもしれませんが、現在、経済力が劣る国や地域では、市民の購買力が低いため、高価な商品は売れません。しかし、経済状態が良くなり、豊かな人たちが増えれば、高価な商品も売れるようになります。現在経済力が強い国や地域は、そうしてできた新たな市場で商品を販売して利益を上げればよいので、その効果を考えれば、一概に不利とは言えません。
Cデメリット
(1)インフレーションが起きる可能性がある
大量に通貨を発行すると、物の価値に対して通貨量が過剰になり、インフレーションが起きる可能性があります。その為、設備の価値に見合った、適正な価格を支払う必要があります。そこで、国際入札に参加が可能な全企業の、UNREFの為に使える設備の年間生産能力を合計し、その量の9割程度を、年間発注量とすると良いと思われます。こうすれば、ほとんどの企業が十分に受注できるものの、10割ではないので競争が生まれ、不当に価格がつり上がる事を防げます。それでも、国、地域の経済状況によって、深刻なインフレーションが起きる可能性がある場合は、発注量を調整する必要があるかもしれません。
(2)目的が拡大される可能性がある
目的は、再生可能エネルギー関連に限定すべきです。無限に予算を使える制度は、様々な分野で魅力的に映るかもしれませんが、濫用すると、現在の経済に大きな影響を与える可能性があります。また、平和維持活動に使うと、強大な軍事力を持つ国連軍が誕生する可能性があります。どんな状態が平和なのかは、立場によって変わりますし、現在の軍事バランスが大きく変わると、不測の事態が起きる可能性があります。あくまで、人類共通の危機である、地球温暖化の問題を乗り切るため、化石燃料から再生可能エネルギーに転換する事に目的を限定すべきです。
(3)地球温暖化以外の環境問題を起こす可能性がある
再生可能エネルギーを活用することで、他の環境問題が起きる可能性があります。それをできるだけ抑えるため、事業者を選定する国際入札においては、価格だけでなく、環境負荷の少なさも重要な基準にするべきです。ライフサイクルアセスメント(LCA)を行い、次のような点を考慮すると良いと思われます。
・原料の有害性や採掘、産出、生産時の環境への影響や、消費エネルギー
・工場までの輸送エネルギー
・装置を生産する時の消費エネルギー
・設置場所までの輸送エネルギー
・設置に必要なエネルギー
・設備の設置、運用が与える周辺環境への影響
・生産したエネルギーの、送電、蓄電、転換、輸送等が与える環境への影響
・メンテナンスやリユース、リサイクル、廃棄の見通しや、環境への影響
こうした点をポイント化して、その設備で見込まれる発電量、生産量等の単位あたりの環境負荷ポイントが少ない企業や手段を優先するわけです。一定の基準を満たさない企業や、手段には、入札参加資格を与えないようにすれば、他の環境問題が起きる可能性を抑える事ができます。
(4)化石燃料が余って低価格になり、切り替えが進まない可能性がある
再生可能エネルギーが増加すれば、化石燃料が余ります。そのままだと、価格が下がり、使いやすくなるため、再生可能エネルギーへの切り替えが滞る可能性があります。そのため、再生可能エネルギーが相対的に安くなるよう、化石燃料には環境税をかけ、再生可能エネルギーの生産量拡大に合わせて、段階的に高くしていくよう、国際的に取り決めをする必要があると思われます。
Dまとめ
人類が直面している、地球温暖化の危機を乗り切るため、まず必要な事は、再生可能エネルギーを普及させる目的に限って、国連が無限の予算を使える仕組みの創設を“決める”事です。国際的に合意して“決める”だけで、人類が可能な最大限に近い速度で、化石燃料から脱し、再生可能エネルギーで全世界のエネルギーを賄う世界を実現できるのです。この方法なら、人類はこれからも進化の道を歩み続けることができるでしょう。
国連、世界の国、地域の指導者、世界に大きな影響を与える実力者、そして、全世界の人々が、一日も早く、この提言の重要性に気づき、“決めて”頂くことを願っています。