一定の反発はあっても、現在異常が起きていない原発を動かす事にまで反対する声は、それほど拡がらないだろうと考えていたのです。
しかし、現実には抵抗を感じている人がかなり多く、強引に動かそうものなら、暴動が起きてもおかしくないような雰囲気です。
多くの国民がこのように感じているのではないでしょうか。
・まだ福島第一原発の事故が進行中で放射性物質が漏れているのに、再稼働は早すぎる。
・国の安全宣言は、本当に安全を確認したと言うより、再稼働ありきで、夏の電力需要に間に合うタイミングに合わせたようにしか見えない。
・一基動かせば、全部動かすに違いない。
・国が言う「安全だ」に何度もだまされた。信じられない。
・電力業界の隠蔽体質、危険を想定しない楽観主義がよく分かった。原発は任せられない。
・原発を全部止めても計算上、電気は足りる。
・もし節電が必要としても、我慢する覚悟はある。原発に頼るよりまし。
・高レベル放射性廃棄物の最終処分をどうするのか決まっていないのに、これ以上死の灰を増やすな。
・核燃料サイクルはどう考えても破綻しているのに、それを認めず進めようとする原子力業界に、正常な判断ができるとは思えない。
この記事は、再稼働の条件を考えてみようと思って書き始めたのですが、これだけ挙げてくると、やっぱり再稼働は無理な気がしてきました。
しかし、そうなると、脱原発はハードランディングどころか、墜落に近い急降下で、わずか1年で事実上達成という事になります。
それもできなくはないでしょうが、気象条件や発電所のアクシデントによっては、本当に大規模停電が起きるリスクはあります。
もし再稼働が認められるとしたら、次のような条件が必要かと思います。
■国として、年限を定めた脱原発を宣言する。
■核燃料サイクルの中止を決定する。
■運転開始から30年以上経過した原発の即時停止、廃炉を決定する。
■本格的なストレステストの実施を決定した上で、暫定的に、多くの国民が納得できる厳しい条件をクリアした原発に限って再稼働し、条件を満たせない所は廃炉を決定。改修で対応できる所は、それが済むまで稼働しない。
ここまで速やかに決定した上で、
■再生可能エネルギー促進法を成立させる。(できれば買取価格、買取年数も法律に入れて)
■原子力関連予算は、廃炉や放射性廃棄物処理関連を除き大幅に削減し、再生可能エネルギーの開発・普及に回す方針を決める。
■原子力行政に関わる組織の大幅なスリム化、安全に関して独立して専門的に判断できる組織の創設を決める。
こうした方針を打ち出せば、国の脱原発、再生可能エネルギー普及への転換が確信でき、過渡的に一部の原発を稼働する事への理解を得られるかもしれません。
ただ、国民の原発に対する嫌悪感は相当高まっていますから、それでも駄目かもしれません。
そうなったとしても、国の脱原発の方針が確認できれば、電力会社も、原発をあきらめて、LNG火力を増設したり、地熱、風力、太陽光、木質バイオマス、小水力など、可能な限りのエネルギーをかき集める方向に転換できますから、早晩、電力不足は解消されるでしょう。
一時的には電気代が上がる可能性はありますが、原発にかけていたコストは削減できますから、そのうち下がっていくでしょう。廃炉の費用をどう負担するかによっては、電気代はすぐに安くなるかもしれません。
まぁ、電気代が上がるか下がるかは、為替の変動の方が、要因としては大きいでしょう。
原発の再稼働については、少なくとも、中途半端な説明で国民が納得する状況ではまったくない事は、政府も行政も理解した方が良いと思います。
現時点で、原発稼働に問題が無いとのお考えの様ですが、その根拠はどこから来るものでしょうか? 福島原発事故は、日本原発の安全管理が全てフィクションであった事を完全に証明してしまいました。その余りにずさんな内容を以下に示します。
@電源が無いと稼働しない冷却系
A電源車は交通渋滞で到着に時間がかかりすぎた
B送電線の修理はできなかった
C電源車が到着するも、プラグの規格が合わず、接続不能(笑)この件に関しては、呆れてものが言えません
C津波が来ても5m程度というウソ(今回の津波は明治三陸大津波級であり、未曾有のものではない。)
D津波対策をしないディーゼル発電機
E津波対策の甘い発電所
F地震対策の無い送電線(福島は、地震で送電線が倒壊し、受電不能となった)
以上の状況は、現在の日本における全ての原発にあてはまります。この状況で、現在も原発が稼働している事すら、気違い沙汰です。例えば、311地震で爆発しなかった女川原発でさえ、デォーゼル発電機の故障によって、2時間に渡り全電源を喪失し、メルトダウンの危機を迎えていました。幸い、火力発電所の復活によって事無きを得たのです。女川が福島と異なっていたのは、建設時に土盛りをして、海抜15mにしていた事だけです。これによって、壊滅的な被害は防げましたが、海水は発電所内に侵入し、何基ものディーゼル発電機を起動不能にしました。海抜が10mであったなら、女川も爆発していた事でしょう。女川は運が良かっただけなのです。ちなみに、女川の所長は、津波にのまれて殉職しました。危険を顧みず、指示を出し続けた女川所長の行動は、賞賛に値しますが、女川が危険な原発である事を身を持って証明しました。
現在、原発が異常なく動いている事と、津波による電源喪失で爆発が起こる事とは無関係です。現在の原発が異常なく動いていようと、津波が来ればイチコロです。富永さんが書かれている様に、”現在異常なく動いている”事は、原発再稼働の可否について、何の意味も持ちません。
以上の事実を踏まえた上で、稼働が可能と思われたのでしょうか? 現在の状況で、日本の原発が動いている事さえ、危機的な状況なのです。その事実が、日本のジャーナリストから発信されない事は、異常だと思います。